Anytime, Ainutime! アイヌとともに時間を過ごす阿寒湖ガイドツアー

阿寒摩周国立公園の原生林に囲まれた、ひがし北海道屈指の美しさを誇る湖、阿寒湖。そのほとりには複数の温泉宿が立ち並び、阿寒湖温泉街として多くの観光客を受け入れています。

この温泉街の一角にあるのが日本の先住民族アイヌによって作られた工芸と芸能の集落「阿寒湖アイヌコタン」。民芸品と飲食店が軒を連ね、アイヌの文化を伝えています。

「Anytime, Ainutime!」は自然を敬い、阿寒湖で生きてきたアイヌ(阿寒湖アイヌコタンで暮らしている住民を含む)の案内で自然散策、ものづくりを楽しむガイドツアーです。

アイヌは自然に語りかけながら植物を採取したり、大切な人を想いながら、自然をモチーフにした文様を木彫、刺繍します。人と人、モノ、自然との関係性を大事に育んできたのです。「Anytime, Ainutime!」というコンセプトには、この素晴らしい文化を、「体験」を通して伝え継ぎたいという想いが込められています。

アイヌの思想や暮らしの知恵が、生きるヒントとして心に宿る。旅が終わってからも続く、豊かな時間をお届けします。

阿寒湖のアイヌ文化について紹介

「アイヌ」とはアイヌ語で「人間」を意味します。アイヌはあらゆる存在に魂が宿ると考え、中でも自然の恵み、人間が生きていく上で欠かすことのできないものや人知を超えたものを「カムイ(神)」として敬ってきました。

アイヌには「アイヌ・ネノアン・アイヌ」、「人間らしくある人間」という言葉があります。アイヌという言葉は、「地球に生を受けた命のひとつとして、カムイと向き合って生きる自覚とともにある」という、深い意味を持つ言葉なのです。アイヌにとって大切な考え方や文化に、そっと触れてみましょう。

阿寒湖の温泉を活用し、着物を制作

阿寒湖の森は、かつてアイヌにとって住む場所ではなく、衣類や道具のもととなる様々なものを得る、狩猟採集の場所でした。

アイヌは、繊維を加工して着物である「アットゥシ」を作るために、阿寒湖の温泉を活用していました。阿寒湖にはアットゥシの材料となる「オヒョウ」という木がたくさんあります。この木の内皮を温泉につけると柔らかくなり、はがれやすくなります。縦に割いて細い糸状にしたものをつないで紡ぎ、織機にかけて反物にし、着物にしました。

食材を活かしたアイヌ料理

また、湖やその周囲の森ではヒメマス、ウグイ、イトウなどの魚や、鹿を獲ったり、ギョウジャニンニクやニリンソウ、オオウバユリの根などを採取しました。山菜の採取は必要最低限だけ、一ヵ所を採り尽くしてしまわないことを原則としていました。獲ってきた魚や鹿、採ってきた根のでんぷんで作った団子などは、アイヌの伝統家屋チセの囲炉裏の上で干し、燻製にしました。

アイヌの料理は、食材そのものを活かすようシンプルな味付けで無駄なく調理されました。主食は「オハウ」と呼ばれる汁物です。肉や魚のアクを青物に吸わせえぐみを和らげ、獣や魚の油脂を使って甘味を増し、味を調えました。さらっとしたサヨ(お粥)とセットで一食が完成することとなります。

信仰を大切にした生活文化

アイヌにとっての狩猟採集は、人間のもてなしを受けたいカムイを、「迎えに行く」行為でした。 獲った動物や採った植物は大切なカムイからの客人なので、人々はその訪問を喜び手厚くもてなし、可能な限りのお土産をもたせ感謝と祈りの言葉、供物を捧げて天上のカムイのもとへ再びお送りしました。

「カムイモシリ(神の国)へ送り届ける」のは動物だけでなく、人が作った道具も同じでした。壊れたり古びたりしたものをカムイモシリへ送ると、また新しい生命が宿りそこでよみがえるのだ、と考えられていました。アイヌ文化は生活文化であり、その生活は信仰と分かちがたく結びついていたと言えます。

伝え継がれてきた芸能や工芸

アイヌは文字をもたない民族でしたが口承で歴史や物語を伝え、音楽や踊り、刺繍や木彫など豊かな芸術表現と精神文化を築きました。阿寒湖のアイヌコタンには、今日まで絶えることなく芸能や工芸の灯がともされています。

アイヌにとって歌と踊りはほぼ一体のもので、儀式で奉納するもの、動植物をモチーフにしたもの、娯楽として行うものなど様々ありますが、その多くは目には見えないカムイと共に行い、喜ばせるためのものです。

また、刺繍や木彫のアイヌ文様は、一針、一彫りごとに身に付ける人への想いをこめて施されます。アイヌ文様の刺繍も木彫もすべて手で行うため完全な左右対称にはならず、少しずつずれていくために生じるゆらぎが、人間的な温もりと美を生み出しています。

阿寒湖で息づくアイヌ文化

阿寒という言葉の由来はアイヌ語でも諸説あり、阿寒湖に島(チュウルイ島など)があることを、湖に穴が開いている様に見立て「アカム」※1と呼んだという説、「ラカン」(ウグイの産卵の意)に関係するという説、地震のとき雄阿寒岳が動かなかったことから、アイヌ語の「アカン」(不動の意)に由来するという説※2があります。

アイヌ語は名を聞けば「対象がどんな性質、形状、特徴をもっているか」を、理解できることが多い言語です。その特質は「天から役目なしに降ろされたものはひとつもない」という、アイヌのことわざを思い起こさせます。アイヌにとっての表現は楽しみや実用の意味もありながら、祈りを兼ね備えたものだとも言えるでしょう。

  • アカムとはトゥレプ(オオウバユリ)の根のでんぷんを団子状にして輪っかを作り、乾燥させたもののことです。またアカムという言葉には車輪という意味もあります。
  • アカンの語源には諸説あります。

実施・運営

阿寒アイヌ工芸協同組合
北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉4丁目7-84
TEL 0154-67-2727